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スターリンク:新型アンテナと現行モデルの徹底比較

間もなく販売開始が期待されるスターリンク第3世代アンテナキットに含まれる新型アンテナと現行アンテナのスペック比較と設置などに関して、施工専門会社としての見解を含めて解説します。

目次

スペック比較表

特徴 新型アンテナ 現行アンテナ 平面高性能アンテナ
アンテナタイプ 電子フェーズドアレイ
方向調整 手動 自動 固定
耐環境性 IP67タイプ4 IP54 IP56
融雪機能 最大40 mm/時
(1.5インチ/時)
最大75 mm/時
(3インチ/時)
動作温度 -30°C~60°C
(-22°F~140°F)
-30°C~50°C
(-22°F~122°F)
視野 110度 100度 140度
平均消費電力 75~100W 50~75W 110~150W
耐風性 (風速) 80 km/時以上
(約22.2 m/s)
情報なし 280 km/時以上
(約77.8 m/s)
アンテナ寸法(mm) 303×594 303×513 511×575
アンテナ表面積
(平方mm)
180,282 155,139 293,825
アンテナ奥行き(mm) 39.7 情報なし 41
付属マウント キックスタンド 4脚台座 ウェッジマウントキット
重量 2.9 kg
3.2 kg with Kickstand
2.95 kg
3.95 kg with Base
情報なし

主な変更点と解説

方向調整

現行型はスターリンクの代名詞ともいうべき自動で最適な角度に調整する機能を搭載しています。それに比べると平面高性能アンテナ(FLAT HIGH PERFORMANCE:以降FHP)は車や船に固定することを前提としており、アンテナ単体で調整することは想定していません。
新型はキックスタンドというスマートフォンの自立スタンドのような脚で立たせて、方角に合わせて調整することが前提です。その他にマストに取り付けたり、屋根の側面に設置することなども想定されており、アプリで方角を確認しながら方向を調整することとなっています。
ただしこれは設置場所によっては大きなメリットになります。現行型はほぼ強制的に北に向いてしまいますが、北に障害物があり他の方位が開けている場合もあるでしょう。そういった場合に強制的にその方向に向いて設置することができるのです。かといってマンションの南面にあるベランダで受信できるかと言われると、それはまだ難しいかもしれません。

耐環境性

IP67Type4(新型アンテナ)

IP67: このコードは、機器が完全な防塵保護を提供し(「6」)、一時的な水没(最大1メートルの深さで最大30分間)に耐えることを示します。これは、非常に厳しい環境での使用に適していることを意味します。 タイプ4: これはおそらくNEMA(National Electrical Manufacturers Association)の規格を参照していると思われます。タイプ4は、防水と防塵性能があり、屋外での使用に適しています。これは、電子機器が風雨から保護されることを保証します。

IP54(現行アンテナ)

このコードは、機器が限定的な防塵保護(「5」)を提供し、どの方向からの水の飛沫にも耐えることができる(「4」)ことを示しています。これは屋内、または比較的穏やかな屋外環境での使用に適しています。

IP56(FHP)

このコードは、機器が限定的な防塵保護(「5」)を提供し、強力な水流に対して保護を提供する(「6」)ことを示しています。これは、機器が水流に晒される可能性のある環境での使用に適しています。

融雪機能

融雪機能は現行型と変化はありませんが、現行型はアンテナを収納モードにすることでアンテナを立てることができるため、積もった雪を下ろすことができる可能性があります。新型は角度の調整ができないため、大雪の場合には少し不利になるかもしれません。

動作温度

動作温度の下限は―30℃と変化はありませんが、最高温度が50℃から60℃へとあがっています。

視野(通信の角度)

従来のアンテナは100度でしたが110度に変更になりました。FHPは140度と非常に広範囲です。この角度がすべての方向に対してと言う意味であれば10度の差は高度550kmでは非常に大きな差になります。

平均消費電力

新型は現行よりも消費電力が上がっています。アンテナの表面積が増え、内蔵されるフェーズドアレイアンテナの数が増えたことによるものと考えられます。また融雪ヒーターの面積も増えているでしょう。PoEの電圧はまだ不明ですが、おそらく新型も国内においてケーブルの固定工事等は電気工事士の資格が必要になると思われます。

耐風性

乗り物に搭載して走らせる場合でなければ、耐風性は時速ではなく風速(秒速)で表した方がなじみがあると思います。
時速80km以上と書かれると強度が高いと思うかもしれませんが、風速22.2m以上と表現するとどうでしょうか。新型アンテナの裏に金具を固定するギミックの都合でこの程度までの耐風性なのかもしれません。この強度では台風で飛ばされてしまう可能性もあります。現行の耐風性はスペック表では公開されていません。
FHPは乗り物に搭載する前提ですので、時速280km以上と言うのは十分なスペックですね。

アンテナ寸法と表面積

新型アンテナは小型化するといううわさがありましたが、現行より大型化しています。面積比で言うと約1.16倍です。ですがFHPは現行の約1.9倍、新型の約1.6倍の大きさがあります。
なおビジネスモデルで使われる高性能型はFHPにモーターなどが付いたモデルと考えられます。つまり大きさや視野角などは同一です。

付属マウント

現行型と新型は地面においてすぐに使えることが前提になっており、現行型は4脚スタンド、新型はキックスタンドと言う折り畳み式の脚が付属しています。

重量

これは意外だったか期待外れと思われた方が多いかもしれませんが、現行型とほぼ変わりません。モーターや本体付属マストは省略されましたが、単純にアンテナが大きくなった分の増量でしょう。屋根の側面(破風)や壁面に設置する場合は熟練の技術と知識が不可欠です。

スターリンクアカデミーがおすすめするのは

レジデンシャルプランの場合

スターリンクアカデミーでは、戸建て住宅や倉庫、別荘、小規模事業所での利用を想定したレジデンシャルプランに現行アンテナの使用を推奨しています。新型アンテナの取り付け金具に対する懸念が理由で、特にパイプマウントアダプターの固定が浅く、強風に対しての耐性が不十分と評価しています。また、現行アンテナは当社(株式会社クラウンクラウン)による豊富な設置実績と安定した取り付け方法が確立されています。

Roamプランの選択肢と電力消費の考慮

Roamプランは、移動先での一時的な設置と利用を想定しており、移動中の通信は制限されています。自動で方向調整が可能な現行型が便利ですが、通常は北向きに固定されるため、北以外が開けた地域では不利です。新型アンテナはクイックスタンドにより設置が簡易ですが、分割されたアンテナキットの組み立てが必要で、特にモバイルバッテリー(ポータブル電源)や発電機を用いる場合、高い消費電力を十分に考慮する必要があります。

マリタイムプランの利点と課題

マリタイムプランでは、新型フラットアンテナの使用が可能ですが、初期費用を抑えた利用が見込まれます。ルーターも新しいモデルに更新されていますが、新型アンテナ用のウェッジマウントキットが不足しているため、船体や車体に直接固定する際には慎重な検討が求められます。

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