海外で無料の一時停止「Pause」が廃止され、月額5ドルで低速データを無制限に利用できる「スタンバイモード」が登場しました。日本でも導入される可能性を見据え、実際の設置先で感じた使用感や活用シナリオ、海外ユーザーの声を交えて解説します。
目次
スタンバイモードとは?
海外では既存のPause機能がアップデートされ、月額5ドルで最大0.5Mbpsの低速通信を無制限に利用できる「スタンバイモード」が提供開始。完全停止ではなく常時“細くつながる”ため、圏外地でもアプリ操作や再開が可能で、端末のソフトウェア更新も自動的に行われます。
海外掲示板サイトの反応
批判派:「無料が有料になっただけ」「ベイト&スイッチ」
無料停止から有料スタンバイへの転換
無料停止から有料スタンバイへの転換
“Starlink is pulling a classic bait-and-switch.”
和訳:「スターリンクは典型的なおとり商法をやっている。」
客寄せの後に条件変更
客寄せの後に条件変更
“They hooked people with free pause, now it’s gone unless you pay.”
和訳:「無料の一時停止で客を引き付けておいて、今や金を払わないと使えない。」
金額ではなく原則の問題
金額ではなく原則の問題
“It’s not about the $5, it’s the principle.”
和訳:「5ドルの問題じゃない、原則の問題だ。」
無料でできていたことに料金がかかることへの不満が目立ちます。
肯定派:「スタンバイは用途次第で価値あり」
別荘・休暇用物件に最適
別荘・休暇用物件に最適
“For cabins and vacation homes, this will be very useful.”
和訳:「別荘や休暇用の家にはとても役に立つ。」
長期不在時も低速でつながり、必要な時だけ高速化できる柔軟さを評価。
監視・IoT機器の死活維持
監視・IoT機器の死活維持
“$5 standby gives you 0.5 Mbps unlimited — good enough for monitoring.”
和訳:「5ドルのスタンバイは0.5Mbps無制限。監視用途なら十分。」
防犯カメラやセンサーなど、低速で足りる常時接続ニーズにマッチ。
再起動やリモート操作の安心感
再起動やリモート操作の安心感
“Even in remote areas, you can bring it back online without traveling.”
和訳:「遠隔地でも現地に行かずに回線を復旧できる。」
完全停止ではなく低速接続を維持することで、圏外地でも再稼働が容易になる点を評価。
安価な維持費での運用が可能
安価な維持費での運用が可能
“$5 a month is cheap insurance for having a live connection.”
和訳:「月5ドルで回線が生きている安心を買えるのは安い保険だ。」
月額コストを抑えつつ、常時接続のメリットを享受できると考える層も多い。
別荘や山間部での二拠点利用には歓迎の声が多く、常時低速でも通知や遠隔アクセスが可能になる点を評価。
実用面での評価
“$5 standby gives you 0.5 Mbps unlimited — good enough for monitoring.”
和訳:「5ドルのスタンバイは0.5Mbps無制限。監視用途なら十分。」
設置先で感じたリアルなメリット
これまで一時停止状態だと通信が完全に切れるため、現地がスマホ圏外の場合、再稼働手続き自体ができないことがありました。
スタンバイモードなら低速ながら常に接続が維持されるため、急な利用や緊急時の復旧が格段にスムーズになります。
別荘や二拠点利用の場合、不在時も端末の更新や遠隔アクセスができ、ちょっと立ち寄っただけでもそのまま通信が可能。高速通信が必要なときだけプランを切り替えれば、Roam無制限よりもはるかに低コストで運用できます。
観測データ送信や遠隔監視など、常時フル帯域は不要だが回線が生きている必要がある用途にも好適。従来のRoam 10GBプラン(超過後1Mbps)より速度は落ちますが、料金が下がるためコスト効率は高いと感じます。
設置直後は約1時間、パスワードなしの「STARLINK」SSIDで高速接続できる時間があり、この間に設定やアクティベーションを済ませれば作業が非常にスムーズ。こうした小さな仕様も現場で使ってみないと分からないポイントです。
活用の具体例
別荘・二拠点生活
- 不在時:スタンバイでアップデート維持
- 短時間の滞在:低速で十分な通信をそのまま利用
- 会議や作業が必要な時だけ高速プランに切替
観測・監視用途
- 低速常時接続でセンサーやカメラを維持
- 必要時のみ高速化してデータ取得
BCP(事業継続計画)
- 災害時の即時復旧に備え、低コストで回線維持
- 保管中も遠隔で死活監視や更新が可能
まとめ
スタンバイモードは単なる「無料停止の有料化」ではなく、常時細くつながることで利便性や安心感を提供する新しい選択肢です。別荘・二拠点・観測・BCPなど、高速通信が常時不要なケースでは費用以上の価値を生むでしょう。
日本でも既にRoam 10GBプランが新規選択不可となっており、海外と同様の流れでスタンバイモードが導入される可能性は高いと見られます。導入時の料金は米国同様5ドル前後(日本円で約750円)が想定されますが、国内価格に合わせた調整が行われるかもしれません。
(8/20追記【730円/月】とアナウンスがありました)
背景には、Starlinkの強力な生産体制があります。今年稼働した新工場だけでも1日15,000台以上の端末を生産しており、その一方で「購入されたまま使われずに保管される端末」も少なくないと考えられます。衛星通信事業における主な収益源は月額契約料であり、未稼働の端末は収益化されず、在庫コストだけが発生します。
無料の休止モードを廃止し、有料のスタンバイモードに置き換えることは、こうした死蔵端末からも一定の維持費を回収できる合理的な施策です。また、低速ながら常時接続を維持することで、復旧時の手続きやサポート負担が軽減され、実稼働率の向上も期待できます。
短期的には「とりあえず買っておく」層の購買意欲が下がる可能性はありますが、端末が必要な地域やユーザーにより早く行き渡ることで、中長期的には稼働率と収益性の両面でプラスに働くと考えられます。世界各国に順次展開が進む中、「眠っているよりも、使いたい人の手に渡る」ことこそがStarlinkの成長戦略に沿った動きと言えるでしょう。
参考リンク
追記
8/15 カナダユーザーからの報告
8/15 カナダユーザーからの報告
海外掲示板でユーザーの一人が以下のようなメールを受け取ったと報告しています。
【原文】
Switch to Standby Mode and Stay Connected
We’ve upgraded the Pause feature to include Standby Mode, so you stay connected even when you’re not using your regular service plan. For CA$7 per month, you’ll have unlimited low-speed data, perfect for calls, texts, and instant reactivation during emergencies or in dead zones. You’ll also continue to receive software updates to keep your system up-to-date.
To opt-in, click Confirm Standby Mode and follow the steps below before 10/13/2025. If no action is taken, your paused service line will be cancelled.【翻訳】
スタンバイモードに切り替えて接続を維持
Pause機能をアップグレードし、スタンバイモードを追加しました。これにより、通常のサービスプランを使用していない時でも接続を維持できます。月額7カナダドルで、通話やテキストメッセージ、緊急時や圏外での即時再アクティベーションに最適な、低速データ通信を無制限に利用できます。また、システムを最新の状態に保つためのソフトウェアアップデートも継続して受け取れます。
このモードを有効化するには、2025年10月13日までに「スタンバイモードを確認」ボタンをクリックし、以下の手順に従ってください。何も行わない場合、休止中のサービス回線は解約されます。
今回のメール内容は、無料休止状態を維持しているユーザーにとって大きな転換点となります。特に「何もしなければ2か月後に強制キャンセル」という条件は、多くのユーザーに即時対応を迫るものです。
海外掲示板でも、「将来的にキャンセル状態からの復帰には追加費用が発生する可能性があるため、自分なら迷わずスタンバイモードに切り替える」という意見が目立ちます。実際、スタンバイモードであれば低速ながら常時接続を維持でき、端末やアカウントのアクティベーションを即座に行えるため、緊急時のリスク低減に有効とされています。
さらに、DishyTechの記事でも、今回の変更は無料休止を事実上廃止し、今後はサービス再開やアカウント維持に費用がかかる方向へ移行する可能性が示唆されています。端末をすぐに使える状態で維持したいユーザーにとって、スタンバイモードは今後ますます重要な選択肢となるでしょう。