法律改正の概要
イラン議会は2025年6月23日、「敵対諸国との協力」や「未承認通信機器使用」に対する厳罰化を目的とした法律を可決しました。
この法案は、通信の自由を制限し、国民が国外と接触する手段を政府の管理下に置こうとする動きの一環とみられています。
この動きは、国営通信社ISNAや、bne IntelliNews、Iran Internationalなどの信頼性の高い報道機関によって報じられました。
スターリンク使用者への刑罰は?
今回の法改正により、イラン国内でスターリンクを所持・使用した場合、6ヶ月から2年の懲役刑が科される可能性があります。
さらに、スターリンク端末を10台以上輸入した場合には、5年から10年の禁錮刑となると定められています。
これらは明確に通信機器の使用と輸入に対する罰則として明記されており、国の情報統制政策の強化と読み取れます。
死刑対象は諜報・協力活動
一部のメディアでは「スターリンク利用で死刑」との見出しが拡散されましたが、正確には誤りです。
実際に死刑が科される可能性があるのは、「米国、イスラエルなど敵対国との諜報活動・協力行為」に関与した場合であり、これが「地上の腐敗(corruption on earth)」という重大犯罪として扱われます。
単にスターリンクを使用しただけでは死刑の対象にはなりません。
むち打ち刑や罰金の可能性
一部メディア(Economic Timesなど)では、使用者が「罰金」や「むち打ち刑(flogging)」の対象となる可能性があるとも報じています。
ただし、この件については法案の条文に明確な記述がなく、現時点では情報が錯綜している段階です。
正式な法解釈が出るまでは、刑罰内容はあくまで報道ベースでの推定にとどまります。
通信遮断とスターリンクの影響
2025年6月13日以降、イランは全国的なインターネット遮断を実施しました。
これに対し、Elon Musk氏率いるSpaceXはスターリンク衛星通信を再稼働し、一部ジャーナリストや市民がこれを通じて国外と通信していたとされます。
当局はこの行為を「国家の情報安全保障に対する脅威」とみなし、スターリンクの使用制限を明文化したとみられます。
国際社会と人権団体の懸念
国際人権団体であるAmnesty Internationalは、今回の法案が恣意的な運用によりスパイ容疑での逮捕や拷問、適正手続きなしの死刑につながる懸念を示しています。
実際、すでに数百人がスパイ容疑などで逮捕され、複数の処刑も報告されています。
国際社会では、情報遮断とともに言論弾圧が加速する中、スターリンクが果たす役割がより注目されています。
まとめ:誤報と事実を整理
「スターリンクを使うと死刑になる」という報道は、現時点では誤解に基づくものです。
実際には、スターリンクの使用や輸入は懲役刑の対象ではあるものの、死刑となるのは敵対国家との明確な諜報活動や協力行為に限られます。
現在イラン国内でスターリンクを使用することは非常にリスクが高く、利用者は注意が必要です。
論点 | 内容 |
---|---|
スターリンク使用で死刑? | 誤報(使用のみで死刑対象にはならない) |
スターリンク所持・使用 | 6ヶ月~2年の懲役刑 |
10台以上の輸入 | 5~10年の禁錮刑 |
死刑対象 | 敵対国家との諜報協力など |
むち打ち刑 | 報道はあるが法的根拠は不明 |